NOTE 53 · 営業の実践ノート
リテール営業とは:個人や小口のお客様を担当する仕事の流れ
公開:2026年10月3日
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リテール営業とは、個人のお客様や、小口の取引を担当する営業を指して使われることが多い言葉です。業界によって意味が違い、金融では個人のお客様向け、メーカーや卸では小売店向けの営業を指すことがあります。まず自分の会社での意味を確かめ、そのうえで、訪問や来店のたびに、相手の用件・説明が伝わったか・次に誰が何をするか、を確かめます。
この記事の目次 読みたいところへ ↓
こんなときに リテール営業の担当になり、誰を相手に、何をする仕事なのかを確かめたいとき。
- 1
自分の会社での「リテール」の意味と、担当の範囲を確かめる
- 2
相手の用件を、相手の言葉で聞く
- 3
説明したことが伝わったかを、相手の言葉で確かめる
- 4
次に誰が何をするかを決めて、記録する
会話・記入例は、説明用の例です。自分の案件の条件へ置き換えて使ってください。
リテール営業とは:個人や小口のお客様を担当する営業
リテール営業とは、個人のお客様や、小口の取引を担当する営業を指して使われることが多い言葉です。「リテール(retail)」は、英語で小売りを意味します。品物を、使う人へ少しずつ売る、という意味です。営業の言葉としては、一件ごとの取引が比較的小さく、相手の数が多い仕事を指して使われます。
ただし、この言葉は、業界によって指す相手が違います。同じ「リテール営業」でも、個人のお客様を相手にする仕事のこともあれば、小売店を相手にする仕事のこともあります。求人や社内の資料でこの言葉を見たら、自分の会社での意味を先に確かめるのが出発点です。
初めて担当になると、「個人向けの営業のことだろう」と思い込んだまま仕事を始めてしまい、先輩の話とかみ合わない、という所でつまずきがちです。この記事では、言葉の意味の幅と、仕事の流れの例、訪問や来店のたびに確かめる3つのことを説明します。
営業の呼び名を全体から整理したいときは、営業の種類を先に読んでください。
ホールセールとの違いと、業界ごとの意味
リテールと対になる言葉が、「ホールセール(wholesale)」です。英語で卸売りを意味し、営業の言葉としては、大口の取引や、法人のお客様向けの営業を指して使われることが多い言葉です。次の表は、2つを比べた一例です。
| 比べる点 | リテール営業 | ホールセール営業 |
|---|---|---|
| 相手 | 個人のお客様、小さな会社や店、小売店など | 大きな会社、団体、小売りの本部など |
| 一件の取引 | 比較的小さいことが多い | 比較的大きいことが多い |
| 相手の数 | 多いことが多い | 少ないことが多い |
| 決める人 | 本人や家族、店の担当者や店長 | 担当者、上司、決裁する人など、複数いることが多い |
| つまずきやすい点 | 件数が多く、一件ごとの記録が抜けやすい | 決まるまでの手続きが長く、誰が決めるのかが見えにくい |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
どちらが上、というものではありません。相手の数と、一件の大きさが違うので、準備と記録のしかたが変わります。会社を相手にする営業の進み方は、法人営業とはにまとめています。
業界ごとの使われ方の例は、次のとおりです。会社によって違うので、目安として見てください。
| 業界の例 | 「リテール営業」が指すことが多い相手 | 対になる呼び名の例 |
|---|---|---|
| 銀行や証券などの金融 | 個人のお客様。小さな会社を含めて呼ぶ会社もある | 法人向け、ホールセール |
| メーカーや卸 | 小売店、または小売店の売り場の担当者 | 卸や本部向けの営業、業務用の営業 |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
自分の会社での意味は、上司や先輩に、次のように聞いて確かめます。
自分:「うちの会社で『リテール営業』と言うとき、相手は個人のお客様ですか、それともお店ですか。私の担当は、どこからどこまでですか」
聞く言葉は説明用の例です。「相手は誰か」と「自分の担当の範囲」の2つを聞いています。ここが分かると、準備する資料も、覚える決まりも決まります。
仕事の流れの例
次は、リテール営業の仕事の流れを説明するための例です。扱う商品や会社で大きく違うので、順番だけを見てください。
- その日に会うお客様を確かめる。訪問する相手、来店の予約、電話をかける相手を一覧で見ます。件数が多い仕事なので、前回のメモを一件ずつ読み、今日確かめることを一つずつ決めます。
- 会う・話す。訪問、来店の応対、電話のどれかで話します。相手の用件を聞き、商品や手続きを説明し、次の予定を決めます。
- 会った直後に記録する。次の相手に会う前に、聞いたことと約束したことを書きます。一日に何人にも会うと、誰が何を言ったかが混ざるからです。書き方は商談メモ添削にまとめています。
- 社内へ伝える。手続きの依頼、在庫や納期の確認、上司への相談をします。自分で答えられなかった質問は、ここで確かめます。
- 約束した連絡をする。「確認してお返事します」と言ったことを、期限までに連絡します。
小売店を担当する仕事では、決まった間隔で同じ店を回ることがあります。その場合の訪問の進め方は、ルート営業とはと重なります。問い合わせを受けてから始まる仕事なら、反響営業とはが参考になります。
持ち物は、名刺、説明に使う資料、申込みや注文の書面、筆記用具、メモです。個人のお宅や店の売り場では、机のない場所で資料を出すことがあります。かばんは、A4の資料が折れずに入るか、床に置いたときに倒れにくいかを見ます。名刺は、一日に会う人数より多めに入れておきます。選び方は営業のかばんの選び方と名刺入れの選び方にまとめています。
訪問・来店ごとに確かめる3つのこと
相手が個人のお客様でも、小売店の担当者でも、会うたびに確かめることは次の3つです。
1. 相手の用件を、相手の言葉で聞く
最初に、相手が今日、何を知りたいのか、何を決めたいのかを聞きます。「本日は、どのようなご用件ですか」「前回お話しした件で、その後お困りのことはありませんか」と聞きます。
先に聞くのは、こちらが説明したいことと、相手が知りたいことが、違っていることがあるからです。用件を聞かずに商品の説明を始めると、相手は、自分の質問をいつ言えばよいか分からなくなります。聞き方の順番は商談ヒアリングにまとめています。
2. 説明したことが伝わったかを、相手の言葉で確かめる
説明の後に、「ここまでで、分かりにくい所はありませんでしたか」と聞きます。相手が「大丈夫です」と答えても、大事な点は、「念のため、金額と届く日をもう一度お伝えします」と、こちらからくり返します。
個人のお客様は、その商品を初めて買う人であることもあり、専門の言葉を知らないことがあります。分からなくても、「分からない」と言い出しにくい場面です。伝わらないまま進むと、後で「聞いていない」という行き違いになります。
業界によっては、お客様への勧誘や説明のしかたに、決まりがあります。何を説明しなければならないか、どの書面を渡すか、言ってはいけないことは何か、などです。これらは業界ごとに違うので、会社の研修の内容を確かめ、分からない点は説明の前に上司へ聞いてください。
3. 次に誰が何をするかを決める
別れる前に、次にやることを声に出して確かめます。自分がやること、相手にお願いすること、期限、次に会う日や連絡する日、の4つです。件数が多い仕事ほど、ここを決めずに別れると、どの相手に何を約束したかが分からなくなります。
自分:「本日は、どのようなご用件でしょうか」
相手:「今使っているプランを、見直したくて」
自分:「プランの見直しですね。今のプランで、合わないと感じていらっしゃるのは、どの点ですか」
相手:「毎月の料金が、思ったより高いんです」
自分:「毎月の料金ですね。使い方に合うプランを2つご説明します。……ここまでで、分かりにくい所はありませんでしたか」
相手:「変えると、いつから料金が変わるんですか」
自分:「変わる時期は、確認して明日の午前中にお電話します。それを聞いてから、お決めいただければ結構です」
商品とやり取りは説明用の例です。用件を聞き、説明の後に確かめ、答えられないことは期限を付けて持ち帰っています。この3つは、下の実践シートの項目とつながっています。
場面で変わるところと、言い方の例
確かめる3つは同じですが、相手と会い方で、力を入れる所が変わります。次の表は一例です。
| 場面 | 力を入れる所 | 進め方(一例) |
|---|---|---|
| 個人のお客様が、来店された | 用件を先に聞く | 来店の理由を聞いてから、説明を始める。待たせるときは、どれくらいかを伝える |
| 個人のお客様の家を、訪問する | 約束と、時間を守る | 約束の時刻に行き、終わる時刻の目安を先に伝える。家族と相談したい様子なら、その場で返事を求めない |
| 個人のお客様に、電話をかける | 相手の都合を聞く | 名乗り、用件を一言で伝え、「今、お時間はよろしいですか」と聞く |
| 小売店の、売り場の担当者に会う | 相手の手を止める時間を短くする | 売り場が混む時間を避ける。用件を一つにしぼり、決める人が店長なら、いつ会えるかを聞く |
| 小売店の、店長や仕入れの担当者に会う | 売り場の様子を、事実で伝える | 棚の様子や在庫を見てから話す。数量や時期の提案は、書面にして渡す |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
訪問や電話でのすすめ方についても、会社や業界の決まりがあることがあります。会社の研修の内容を確かめ、分からない点は上司に確認してください。電話のかけ方は営業電話のかけ方にまとめています。
次は、言い方の例です。惜しい言い方と、良い言い方を並べます。
| 場面 | 惜しい言い方 | 良い言い方 | 違い |
|---|---|---|---|
| 個人のお客様への、最初の一言 | 「本日は、新しい商品のご案内です」 | 「本日は、どのようなご用件でしょうか」 | 相手の用件から始めている |
| 説明の後 | 「以上です。よろしいですか」 | 「ここまでで、分かりにくい所はありませんでしたか。金額と届く日を、もう一度お伝えします」 | 大事な点を、こちらからくり返している |
| 小売店の売り場で | 「新商品を置いてください」 | 「この棚で、お客様からよく聞かれることはありますか」 | 売り場の困り事を先に聞いている |
| 答えられない質問 | 「たぶん大丈夫だと思います」 | 「確認して、明日の午前中にお電話します」 | 推測で答えず、期限を伝えている |
表が収まらない場合は、左右に動かせます。
惜しい言い方は、間違いではありません。ただ、こちらの都合が先に出ています。良い言い方は、相手の用件と、相手が分かったかどうかを先に確かめています。
迷いやすい判断と、失敗のあと
判断1:お客様が、家族や店長に相談したいと言ったら?
基準は、決める人が、その場にそろっているかです。そろっていなければ、その場で返事を求めません。「ご相談のときに使える資料をお渡しします。来週、状況を伺ってもよろしいですか」と、次の連絡日を決めます。その場で返事をもらう場面の見分け方は、即決営業とはにまとめています。
判断2:担当の範囲の外の相談を受けたら?
個人のお客様から会社の取引の相談を受けた、小売店から本部との契約の話が出た、などの場面です。基準は、最初に確かめた「自分の担当の範囲」です。範囲の外なら、自分で答えず、「担当の者から、◯日までにご連絡します」と伝えます。社内には、相手の言葉をそのまま渡します。
判断3:件数が多くて、記録が追いつかないときは?
全部をくわしく書こうとせず、一件につき3行にしぼります。相手の用件、約束したこと、期限です。会った直後に、この3行だけを書きます。くわしい内容は、約束のある相手から先に書き足します。約束と期限が残っていれば、連絡を忘れることは減らせます。
判断4:説明の決まりが分からないまま、質問されたら?
基準は、推測で答えないことです。「正確にお答えしたいので、確認して◯日までにご連絡します」と伝えます。上司には、「お客様からこう聞かれました。どこまで、どう説明すればよいですか」と、質問の言葉をそのまま見せて聞きます。
失敗1:用件を聞かずに説明を始め、相手の質問を聞きそびれた
その場では:相手の返事が短くなったと感じたら、説明を止めます。「失礼しました。先に、本日のご用件を伺ってもよろしいですか」と聞き直します。
後の記録:相手が言った用件を、言葉のまま書きます。自分の手順には、「最初に用件を聞く」と書き足します。
失敗2:「聞いていない」と言われた
その場では:言った・言わないを争いません。「説明が足りず、失礼しました。もう一度、ご説明します」と伝え、書面を見せながら説明し直します。自分で判断できない申し出(取り消し、返金など)は、その場で答えず、すぐ上司に報告します。報告の順番は営業で失敗したときにまとめています。
後の記録:何を、いつ、どの書面で説明したかを書きます。次からは、大事な点をくり返して確かめたことも、記録に残します。
失敗3:約束した連絡を忘れた
その場では:気づいた時点で連絡し、おわびと、新しい期限を一緒に伝えます。「昨日お約束したご連絡が遅れ、申し訳ありません。本日の15時までに、お返事します」のように言います(説明用の例です)。
後の記録:約束は、中身・期限・誰がやるか、の3つで書き、その日の終わりに一覧を見直します。ほかの人へ渡すときの書き方は引き継ぎメモにまとめています。
今日やることは一つです。自分の会社での「リテール営業」の意味を上司に聞き、次に会うお客様一人について、確かめる3つを書いてください。
YOUR TURN
自分の一件で、書いてみよう。
手元に用意するもの
担当するお客様(お店)の一覧、前回のやり取りのメモ、会社の商品の資料。
記入例を見る(説明用)
自分の会社での「リテール営業」の意味と、担当の範囲=小売店を担当する営業のこと(課長に確認)。自分の担当は、東地区の小売店。大きな本部との取引は、別の課が担当/今回の相手と、用件=C店の売り場担当の鈴木様。「新しい商品の置き場所を、どこにするか決めたい」/説明したことと、相手の返事=棚に並べる数と、補充の曜日を説明した。鈴木様の返事は「数は分かった。値札は、こちらで作るのか」。値札については、答えられなかった/上司に確かめること=値札はどちらが用意するのか。店頭でお客様から商品のことを聞かれたとき、自分が答えてよいか/次にやること=自分:値札の件を課長に確かめ、木曜までに鈴木様へ電話する。鈴木様:置き場所を店長と決めてくださる。次の訪問は来週の火曜。(店・商品・曜日は説明用の例)
CHECK
ここまでできたら、次へ。
自分の会社での「リテール営業」の意味と担当の範囲が書いてあり、今回の相手の用件が相手の言葉で書かれ、次にやることに期限が付いている。
うまく進まなかったときは?
意味や担当の範囲が分からなければ、上司に「うちの会社でリテール営業と言うとき、相手は誰ですか」と聞く。相手の用件が書けなければ、次に会ったとき「今日は、どのようなご用件ですか」と聞く。説明の決まりが分からなければ、説明する前に上司へ確かめる。